古典文学読書会のブログ

会員制の古典文学の読書会を開催しています。 第4金曜日の19時から21時でオンライン開催。 問い合わせは、classical.literaturesアットジーメルまで

『愚管抄』大隅和雄訳 読書会議事録

2024年11月の読書会では、『愚管抄』を扱ったので、議事録の一部を公開する。 ・慈円は『愚管抄』全7巻の3巻から書き始めた。 最初に第1巻から読んでみたが、不慣れな固有名詞が多くなかなか頭に入ってこなかった。 著者の慈円は第3巻から書き始めたよう…

『歎異抄』 川村湊訳 読書会議事録

2024年10月の第65回古典文学読書会では、『歎異抄』川村湊訳について話し合ったので、議事録を公開する。 以下、課題図書を事前に読了してきた参加者によるディスカッションである。 ・今回の翻訳、開催弁の歎異抄について 広島弁の聖書を思い出した。 ・一…

『平家物語』 古川日出男訳 後半 読書会議事録

2024年9月の読書会では、 『平家物語』古川日出男訳の後半部分を読んだので 読書会議事録を公開する。 ・『平家物語』古川訳は、後半に進むにつれて読みやすくなる。 語り口調にスピード感が増し、没落を描いた部分では特にそのスピード感が際立つ。 夢枕獏…

『平家物語』 古川日出男訳 前半 読書会議事録

2024年8月の読書会では、 『平家物語』古川日出男訳の前半部分を読んだので 読書会議事録を公開する。 ・途切れ途切れの話の集合体 一つの話は短い。短いお話の集合体。全体のテーマは掴みにくかった。 ・平家物語における無常をどのように捉えれば良いのか…

『論語』齋藤孝訳 ちくま文庫版 読書会議事録

2024年7月の読書会では、 『論語』齋藤孝訳ちくま文庫版を読んだので 読書会議事録を公開する。 ・日本社会の論語受容、江戸以降に本格化。 儒教は徳川家康時代、林羅山や藤原惺窩により政治体制と結びついていく。 江戸時代以前の時代は、論語はそこまで読…

読書会設立にまつわる思い

古典文学読書会設立にまつわる思いを書き綴ります。 ・人格形成と創作を出口に見据えた学習プログラムとしての読書会 人類の文化的遺産に触れる古典読書は人生の奥深さに触れるきっかけになることでしょう。古典読書が個人の人格形成を助けてくれのです。 私…

『日本書紀』 福永武彦(訳)の読書会議事録

『日本書紀』 福永武彦(訳)の読書会議事録を公開する。 個人的なハディース(ムハンマドに関する伝承録)を読んだ時のように歴史が立ち上がる時を垣間見た感があった。 以下、読書会での議論の一部を要約する。 ・読み物としては古事記の方が面白い。 物語とし…

『古事記』蓮田善明(訳)の読書会議事録

2024年5月に 『古事記』蓮田善明(訳)の読書会を行ったので、議事録を公開する。 ・古事記の内容を全面的に史実と考えた本居宣長が作ったのが国学。 これが戦前に教育勅語として教育に導入された。 そして明治期の日本は特別な神の国であるという主張につなが…

Explorations in Language Acquisition and Use by Stephen. D Krashenを読む

外国語学習の分野で有名なStephen. D Krashen の Explorations in Language Acquisition and Useを読んだ。 ・外国語の効果的な習得方法とは? 20ヶ国語が話すことができるスティーブさんのyou tubeで紹介されていたので読んでみた。 とても良い内容だった…

『源氏物語 A・ウェイリー版』第4巻の読書会議事録

源氏物語ウェイリー版第4巻の読書会を行ったので、その議事録をまとめた。 ・浮舟こそ初めて自立した女性して描かれた人物なのではないか? 薫と匂宮の両者と関係を持ち出口の見えない葛藤を経験をする中で、死に取り憑かれていく浮舟。 一命を取り留めた後…

古典文学読書会へ参加してくださった方の体験談集

2024年4月16日更新 【60代 女性】 ・教科書で習ったのにタイトルしか知らなかった名著を読んでみたかったが、1人では読破できそうになかった。時限付きの読書会で自分を追い込む事へのメリットがある。 ・他人の意見を聞く事によって違う視点からの理解が出…

Klara and the Sun、Kazuo Ishiguro (著)

Klara and the Sun、洋書マラソン6冊目 読書期間 2024年1月から3月18日 ページ数は340ページ。 英語の小説としては読みやすい方だったと思う。 一部、難しい表現は確かにあったが。 例えば、遺伝子編集の手術を受けた子供を表すliftedを和訳版では「向上処置…

『源氏物語 A・ウェイリー版』第3巻の読書会議事録

源氏物語ウェイリー版第3巻の読書会を行ったので、その議事録をまとめた。 ・面白そうな箇所をピックアップして、ウェイリーの英訳と姉妹訳とを見比べてみた。 As the weeks "vent by, the child grew more and more attractive, and before long even the' …

古典の解説書よりも古典そのものを読むべき理由

古典の解説書よりも古典を読むべきだと思う。 ある時期、古典の解説書をたくさん読んでいた。 世の中にはアリストテレス入門、マルクス入門、という類のものがたくさんある。 その手の入門書を貪り読んでいた時期がある。 ある時、年末に本棚の掃除をしなが…

『源氏物語 A・ウェイリー版』第2巻の読書会議事録

今回は『源氏物語ウェイリー版』の第2巻について、読書会を行ったので、その議事録をまとめた。 今回もペンギン社が作っている読書会用の質問から始まった。 https://www.penguinrandomhouse.com/books/297312/the-tale-of-genji-by-murasaki-shikibu/978014…

『源氏物語 A・ウェイリー版』第1巻

今年は日本の古典を読む年した。 1月は、源氏物語のウィリー版の第1巻について読書会を開催した。 以下、議事録である。 大河ドラマ『光る君へ』を観ている参加者もいた。 以下、例会での議論の一部を要約した。 議論の導線として世界的な出版社であるPengui…

『千夜一夜物語』バートン版 第2巻 大場正史訳の読書会議事録

作品のアマゾンリンク https://amzn.to/4aGwJDf 『千夜一夜物語』バートン版第2巻の読書会の議事録を公開する。 ・せむしの男の物語の床屋について。迷惑な人物ではあるが、知恵者であることも否めない不思議な登場人物。ヨーロッパの昔話に出てくる愚者を装…

The Dictionary of Lost Words, Pip Williams (著)

洋書マラソン 五冊目 読書期間は2023年9月から12月。 432ページ。キンドルで読了。 オックスフォード英語辞典の初版の作成過程を追った歴史小説である。舞台は19世紀終盤から20世紀初頭のイギリス。主人公は辞書編集者の娘であり、名前はエズメという。 最初…

『千夜一夜物語』バートン版 第1巻 大場正史訳の読書会議事録

『千夜一夜物語』バートン版 第1巻の読書会での議論の一部を要約した。 ・近代以前にできた作品 この物語は近代以前のもの。個人の内面世界を描くことはしない。個人を書くのではなく、話がどんどんどんどん展開してく。落語などの芸の世界に通じるものがあ…

ハディース『ムハンマドのことば』小杉泰(編・訳)の読書会議事録

先日行われたハディースの日本語訳、『ムハンマドのことば』小杉泰の 読書会の議事録の一部を共有したい。 イスラーム初期の宗教の政治利用についてどう考えるか?ムハンマドにはそこまでの政治的野心があったとは思えない。全てが政治的な動機からことが起…

A Column of Fireを読む 洋書マラソンその4

洋書マラソン4冊目 読書期間 2023/3/3-2023/8/2 907ページ 16世紀後半のプロテスタントの隆盛を主にイギリスとフランスを舞台に描いた歴史小説。 ケンフォレットのキングスブリッジシリーズの第三作目。 歴史の教科書ではサンバルテルミの虐殺でたくさんのユ…

巨匠とマルガリータ 水野忠夫訳 岩波文庫上下巻 の要約と感想

※上が岩波上巻、下が下巻 2つの時間が交互に行き来する物語。 1930年代スターリン政権下のソ連を舞台とした"巨匠"という作家とそのパートナーのマルガリータの物語。並行して展開するもう一つの物語、2000年前のヨシュアとピラトゥス総督の話が交互に展開す…

なぜ古典か?  その3 古典は変化しないので教養の土台、足場になる

なぜ古典を読むことが大事なのか?シリーズその3の投稿となる。 教養は古典を中心に積み上げるべきだと思う。 なぜならコンテンツが変わらないから。 コンテンツが分からないものを教養の中心に据えるべきだと思う。 その意味で、中学高校や高校の教科書も…

なぜ古典なのか? その2 学習効率の観点から

なぜ古典を読むのか? 前回の投稿では、古典読書を通して著者の魂に触れること、著者の生命力に触れることで豊かな感性を養い、耕された情緒こそがが人類の恒久平和の土台になるのではないかと書いた。 ここではまた違った観点から古典の重要さを語ってみた…

佐々木敏の栄養データはこう読む第2版

栄養関連でエビデンスと調査方法がしっかりとしている本を探している時に見つけた。 疫学的研究に基づく。 疫学はメカニズム把握の学問ではない。 動物実験を用いて生命体の細胞のメカニズムなどを解明することが目的の学問ではない。 動物実験を行うメカニ…

World Without End by Ken Follettを読む  洋書マラソン〜その3〜

洋書マラソン3冊目 2022年10月から2023年2月に読書 1025ページ The Pillars of Earth の続編でキングブリッジ3部作の二作目。 14世紀の中世イギリスが舞台。 主人公は貴族の息子2人、農民の息子、商人の娘の4人でいわゆる当時の普通の人々。 主人公たちの…

『エマニュエルトッドの思考地図』を読む

知的な創作に関わっている方は参考になることが多いかもしれない。 トッドはあくまで自分が納得していることを書いていると感じた。 データに忠実。データを社会階層、家族類型、経済的地位などの観点から分析しているだけ。しかし本当に忠実にそれができる…

『幸福について』ショーペンハウエル

私は本書を自己啓発本と考えた。 この自己啓発書は特殊な自己啓発書である。 多くの自己啓発書は資本主義社会を前提している。 そこである一定の世界観が前提されており、 年収が上がるのがゴール 昇進するのがゴール 好きなことをしてお金持ちになるのがゴ…

転がる香港に苔は生えない by 星野博美

私は古典文学の読書会を運営しているくらいなのでノンフィクションとフィクションを比べたら、フィクションの方がすごいと暗に思っていた。 そんな思い込みを見事に破壊してくれた素晴らしいノンフィクション。第32回大宅荘一ノンフィクション賞受賞作。 著…

The Moon and Sixpence(邦題:月と6ペンス) by W. Somerset Maugham を読む

洋書マラソン 2冊目 2021年年末に読了 215p 洋書小説に慣れていなくても短いので読了しやすいと思う。 邦題は『月と6ペンス』 画家ゴーギャンの人生がモデル。 主人公ストリックランドの性格はやはり英語の方が掴みやすい。 日本語だと少しクセのある性格…