知的な創作に関わっている方は参考になることが多いかもしれない。
トッドはあくまで自分が納得していることを書いていると感じた。
データに忠実。データを社会階層、家族類型、経済的地位などの観点から分析しているだけ。しかし本当に忠実にそれができるのがすごい。データがそろうまで待つ忍耐力とそもそもそれを可能にするだけの膨大な教養の土台が必要となるからだ。
『私が知識人かどうかはともかく、知識人に本当に必要なのはプロフェッショナリズムなのだと思うのです。プロの仕事や手つきにはおのずと芸術性が宿るものなのです。なによりも、リスクを負う、思い切る勇気がある、というのがこの私が言うところの芸術的な学者の条件なのです。このリスクを負えるかどうかは、その人の性格以上に、その人自身が社会にどのように関わっているかということによるのです。』 p231
トッドによると、あるデータや情報が無意識の中に定着するかどうかは、それが自分にとって重いかどうかも関係する。客観的に見た時のデータの重要性という問題もあるが、自分の価値観にも左右される。
トッドの母方の祖父はポールニザンという知識人であり、トッド自身は名門の出と言える。家庭内での文化資本の継承がエマニュエル・トッドをつくったとも言える。"歴史を通じて人間を知る"、"歴史なくして人間にせまることはできない"、という感性は家庭内での文化資本の継承によってもたらされたもののような気がする。