古典文学読書会のブログ

会員制の古典文学の読書会を開催しています。 第4金曜日の19時から21時でオンライン開催。 問い合わせは、classical.literaturesアットジーメルまで

The Moon and Sixpence(邦題:月と6ペンス) by W. Somerset Maugham を読む

洋書マラソン 2冊目 2021年年末に読了 215p

洋書小説に慣れていなくても短いので読了しやすいと思う。

邦題は『月と6ペンス』

 

画家ゴーギャンの人生がモデル。

 

主人公ストリックランドの性格はやはり英語の方が掴みやすい。

 

日本語だと少しクセのある性格という印象があるが、英語で読むととにかく忖度しない人というもっとシンプルな印象。

 

株式仲介人をしていたストリックランドはある日突然奥さんと子供を残してロンドンからパリに引っ越してしまう。

 

目的は絵を描くため。

 

そして2度と家族と会うことはなかった。

 

このあたりの自分のやりたいことのために全く忖度しない度合いが異常なレベル。

 

著者モームの筆力にも吸い込まれる。

 

印象に残った文章を引用する。

 

p146-147

——

 

“The only thing that seemed clear to me  and perhaps even this was fanciful was that he was passionately striving for liberation from some power that held him. But what the power was and what line the liberation would take remained obscure. Each one of
us is alone in the world. He is shut in a tower of brass, and can communicate with his fellows only by signs, and the signs have no common value, so that their sense is vague and uncertain. We seek pitifully to convey to others the treasures

of our heart, but they have not the power to accept them, and so we go lonely, side by side but not together, unable to know our fellows and unknown by them. We are like

people living in a country whose language they know so little that, with all manner of beautiful and profound things to say, they are condemned to the banalities of the conversation manual.  “

 

------

 

ストリックランドは共通価値のない記号によってしか表現できない。貨幣や言語という凡庸な共通価値に溢れている我々現代人の生活へ強烈な打撃を加えるような文章だ。

 

内なる力、衝動に身をゆだねるがごとくストリックランドが人間業とは思えないとんでもない大作を生み出した。

 

本来、言葉では表現できないすごい経験をあえて言語したサマーセットモームの筆力も素晴らしい。

 

ストリックランドという一人の天才のメンタリティを描いた本か。