古典文学読書会のブログ

会員制の古典文学の読書会を開催しています。 第4金曜日の夜オンライン開催。 問い合わせは、classical.literaturesアットジーメルまで

2023-01-01から1年間の記事一覧

The Dictionary of Lost Words, Pip Williams (著)

洋書マラソン 五冊目 読書期間は2023年9月から12月。 432ページ。キンドルで読了。 オックスフォード英語辞典の初版の作成過程を追った歴史小説である。舞台は19世紀終盤から20世紀初頭のイギリス。主人公は辞書編集者の娘であり、名前はエズメという。 最初…

『千夜一夜物語』バートン版 第1巻 大場正史訳の読書会議事録

『千夜一夜物語』バートン版 第1巻の読書会での議論の一部を要約した。 ・近代以前にできた作品 この物語は近代以前のもの。個人の内面世界を描くことはしない。個人を書くのではなく、話がどんどんどんどん展開してく。落語などの芸の世界に通じるものがあ…

ハディース『ムハンマドのことば』小杉泰(編・訳)の読書会議事録

先日行われたハディースの日本語訳、『ムハンマドのことば』小杉泰の 読書会の議事録の一部を共有したい。 イスラーム初期の宗教の政治利用についてどう考えるか?ムハンマドにはそこまでの政治的野心があったとは思えない。全てが政治的な動機からことが起…

A Column of Fireを読む 洋書マラソンその4

洋書マラソン4冊目 読書期間 2023/3/3-2023/8/2 907ページ 16世紀後半のプロテスタントの隆盛を主にイギリスとフランスを舞台に描いた歴史小説。 ケンフォレットのキングスブリッジシリーズの第三作目。 歴史の教科書ではサンバルテルミの虐殺でたくさんのユ…

巨匠とマルガリータ 水野忠夫訳 岩波文庫上下巻 の要約と感想

※上が岩波上巻、下が下巻 2つの時間が交互に行き来する物語。 1930年代スターリン政権下のソ連を舞台とした"巨匠"という作家とそのパートナーのマルガリータの物語。並行して展開するもう一つの物語、2000年前のヨシュアとピラトゥス総督の話が交互に展開す…

なぜ古典か?  その3 古典は変化しないので教養の土台、足場になる

なぜ古典を読むことが大事なのか?シリーズその3の投稿となる。 教養は古典を中心に積み上げるべきだと思う。 なぜならコンテンツが変わらないから。 コンテンツが分からないものを教養の中心に据えるべきだと思う。 その意味で、中学高校や高校の教科書も…

なぜ古典なのか? その2 学習効率の観点から

なぜ古典を読むのか? 前回の投稿では、古典読書を通して著者の魂に触れること、著者の生命力に触れることで豊かな感性を養い、耕された情緒こそがが人類の恒久平和の土台になるのではないかと書いた。 ここではまた違った観点から古典の重要さを語ってみた…

佐々木敏の栄養データはこう読む第2版

栄養関連でエビデンスと調査方法がしっかりとしている本を探している時に見つけた。 疫学的研究に基づく。 疫学はメカニズム把握の学問ではない。 動物実験を用いて生命体の細胞のメカニズムなどを解明することが目的の学問ではない。 動物実験を行うメカニ…

World Without End by Ken Follettを読む  洋書マラソン〜その3〜

洋書マラソン3冊目 2022年10月から2023年2月に読書 1025ページ The Pillars of Earth の続編でキングブリッジ3部作の二作目。 14世紀の中世イギリスが舞台。 主人公は貴族の息子2人、農民の息子、商人の娘の4人でいわゆる当時の普通の人々。 主人公たちの…

『エマニュエルトッドの思考地図』を読む

知的な創作に関わっている方は参考になることが多いかもしれない。 トッドはあくまで自分が納得していることを書いていると感じた。 データに忠実。データを社会階層、家族類型、経済的地位などの観点から分析しているだけ。しかし本当に忠実にそれができる…

『幸福について』ショーペンハウエル

私は本書を自己啓発本と考えた。 この自己啓発書は特殊な自己啓発書である。 多くの自己啓発書は資本主義社会を前提している。 そこである一定の世界観が前提されており、 年収が上がるのがゴール 昇進するのがゴール 好きなことをしてお金持ちになるのがゴ…

転がる香港に苔は生えない by 星野博美

私は古典文学の読書会を運営しているくらいなのでノンフィクションとフィクションを比べたら、フィクションの方がすごいと暗に思っていた。 そんな思い込みを見事に破壊してくれた素晴らしいノンフィクション。第32回大宅荘一ノンフィクション賞受賞作。 著…

The Moon and Sixpence(邦題:月と6ペンス) by W. Somerset Maugham を読む

洋書マラソン 2冊目 2021年年末に読了 215p 洋書小説に慣れていなくても短いので読了しやすいと思う。 邦題は『月と6ペンス』 画家ゴーギャンの人生がモデル。 主人公ストリックランドの性格はやはり英語の方が掴みやすい。 日本語だと少しクセのある性格…

The Pillars of the Earth: A Novel (邦題:大聖堂) by Ken Follett を読む

洋書マラソン その1 2022/5/23-10/3 の約3ヶ月で読んだ。1070ページ。 舞台は12世紀のイギリス。当時の教会を中心とした暮らしを想像する上でも良い作品。 ロマネス様式からゴシック建築への移行が描かれている。 主人公を美しい大聖堂を建築することを夢見…