私は本書を自己啓発本と考えた。
多くの自己啓発書は資本主義社会を前提している。
そこである一定の世界観が前提されており、
年収が上がるのがゴール
昇進するのがゴール
好きなことをしてお金持ちになるのがゴール
など基本的には資本主義社会の中で自然と想定される成功像にそった形で議論が展開される。
対して、本書『幸福について』を著したショーペンハウエルは資本主義社会、言い換えると俗世間から距離を置く。
人生の高尚な目的は俗世間で成功とされるゴールに自分を無理やり適合させることではなく、
むしろそうした俗世間自体から距離を置くことがまず幸福の前提であると主張する。
その上で、自分の能力が最大限に発揮できる分野で社会に対して、ひいては人類文明に対して貢献することが人生の幸福であるとする。
そのためには節度を保ち、経済的基盤の安定を保ち、トラブルを避け、自分にとって重要なことに人生の時間を捧げるべしとする。
自分の仕事がしばしば突発的な不幸に頓挫してしまうこともあるかもしれないが、ショウペーンハウエルによると、多くの人が運命と呼ぶものはたいては自分の愚行の結果にすぎない。その上で、どう思慮深く幸福な人生を歩むことができるかを書いた本。
その意味でこの本は資本主義を前提した自己啓発本よりも深い、