栄養関連でエビデンスと調査方法がしっかりとしている本を探している時に見つけた。
疫学的研究に基づく。
疫学はメカニズム把握の学問ではない。
動物実験を用いて生命体の細胞のメカニズムなどを解明することが目的の学問ではない。
動物実験を行うメカニズム把握の研究を「質」の研究とすると、疫学は「量」の研究だ。
例えば、1日に食塩を10g摂取すると、平均的に高血圧になるリスクがどのくらい上がるのか?
といった量に関する学問だ。
疫学では人間集団の特性を厳格な測定方法で捉える。
例のために食塩の研究を紹介すると、
食塩の日常的な接種の状況を捉えるだけの「記述疫学研究」
食塩の摂取量と血圧の関係を調べる「分析疫学研究」
この2つは観察研究というジャンルに入る。
次に、介入研究。
例えば、高血圧の方々に食事指導をし、その後の血圧の変化を調べる。
ここで疫学は因果関係や2つの変数(食塩と血圧など)の関係性を捉える領域へと進む。
最後に行うのが系統的レビュー。
世界中に存在する大量の研究結果から信頼度の高いもの集め、複数の研究間に存在する傾向を分析する。
疫学研究者の佐々木敏のこの本は、
全体は約30個ほどのエッセイからなり、それぞれ高血圧や糖尿病、ガンなどの症状と栄養の関係が紹介されており、それぞれどんな研究を基に書いたのかも開示されている。
この本の中で私の注意を引いた話題を数点を書くと、
まず食塩と血圧の関係が挙げられる。
疫学研究によると、この2つに相関があることはまず間違いないようだ。
WHOの推奨では塩は1日5gを目指すべきとのこと。
日清シーフードヌードル(1食当たりの食塩4.7g)を食べるだけで簡単に5g近くに届いてしまう。
1日に必要されると食塩の量は1.5gのようだ。
また、血圧は加齢によっても上昇する。
生涯にわたる累積塩分摂取量の観点が大事で、ある短い期間のみ減塩すれば良いというわけではない。
ちなみに世界には、塩分摂取量がかぎりなくゼロに近いノーソルトカルチャーの民族もいるようで、彼らは基本的には高血圧の問題を抱えないようだ。アマゾン河上流域に住むヤノマモ族が典型的なノーソルトカルチャーの人々として紹介されている。
次に飲酒について見ていきたいと思う。
飲酒は、食道、大腸、女性の乳房にできるガンの原因になることがある。
特に、食道がんでは、同じ量のお酒でも、お酒に弱い人はお酒に強い人の4〜5倍発ガンリスクが高まるようだ。日本人はお酒に弱い人が多いの注意すると良いと思う。
最後に糖尿病についてみてみよう。
糖尿病予防として食物繊維が有効であるが、食物繊維を主食と一緒に摂った時のみ明らかに糖尿病リスクを下げる効果があるようだ。
つまり玄米は糖尿病予防に有効であると言える。
故に、穀物全体を避けたり、食物繊維のみを単品で食べるのでもなく、
理想的は主食と副菜の中に豊富に食物繊維が入っていることであろう。
ということは、玄米を主食として副菜として野菜も豊富に食べる食生活が糖尿病予防には最適ということなる。