古典文学読書会のブログ

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『日本書紀』 福永武彦(訳)の読書会議事録

『日本書紀』 福永武彦(訳)の読書会議事録を公開する。

 

個人的なハディース(ムハンマドに関する伝承録)を読んだ時のように歴史が立ち上がる時を垣間見た感があった。

 

以下、読書会での議論の一部を要約する。

 

・読み物としては古事記の方が面白い。

 

物語としての面白さは古事記の方が上だという意見が出た。

 

神々のスキャンダラスな話も古事記ほどは詳しく書かれていない。

 

 

 

・別伝の存在が興味深い。

 

本文に加えて、別伝も収録されている。例えば、神々の話について複数の物語が収録されている。

 

聖書には別伝はない。

 

 

コーランに別伝はない。

 

 

そもそも神々のストーリーに別伝が存在してしまえることが不思議である。

 

 

日本書紀人皇の部は、中国史史記に準じている。

 

 

・この訳は全訳ではないのだが、訳者の福永武彦はどのようして本書収録箇所を決めたのか?

 

 

今回の福永武彦訳での収録箇所はどのように決まっているのか?

 

例えば、なぜ大化改新で有名な天智天皇で終わっているのか?

 

なぜ仁徳天皇雄略天皇の箇所のヴォリュームが多いのか?

 

仁徳天皇は多くの子供を残し、雄略天皇は戦争をした。

 

 

もしかしたら集録されている歌と何か関係があるのかもしれない。

 

 

福永武彦がセレクトしたストーリーに何か傾向があると思われる。

 

 

・女性は男性よりも劣位の存在して描かれている。

 

有名なイザナギイザナミの婚姻と国生みの物語でも、

 

女神のイザナミの方から話したので、うまくいかなったという話に象徴的あるが、

 

女性が先にしゃべったからうまくいかなかった、

 

 

女性だからダメだったという話が散見される。

 

女性蔑視の視点が散見されるという意見が出た。

 

 

女性天皇が古代日本の基盤をつくったのではないか。

 

 

仏教を導入した推古天皇

 

 

大化改新を推進した推進し、朝鮮半島にも出兵した皇極天皇

 

 

律令国家の基礎を築いた持統天皇など、

 

 

女性の天皇によって古代日本の基盤が形作られたのではないか。

 

 

・関東の地名について

 

先月の古事記の会でも関東の地名があまり出てこないという話が話題に出た。

 

日本書紀古事記から8年後に世に出されたとされているが、古事記よりは関東の地名が出てくる。

 

この8年の間に関東の地名が増えたのか?

 

当時は、今で言う関東地方はまだ日本ではなかったであろう。

 

関東の地方が日本に併合されていくのは800年頃の坂上田村麻呂の遠征を経てからであり、

 

本格的に関東と関西の東西二元体制は、鎌倉幕府以降であろう。

 

 

疫病などを抑えるために全国に国分寺が建てられたのは740年代であり、771年に道鏡が流刑されたのは現在の栃木であったのすでに僻地として栃木のあたりは認識されていたようだ。

 

 

・当時は現代よりも血筋の重要性は高かった。

 

当時は、個人の性格などというものはなかったのではないか?

 

性格よりも血筋が人間を規定する。

 

そもそも個人というものがいつ誕生したかということが問題。

 

フランス革命アメリカ独立革命を経て、個人が誕生したのではないか?

 

以前は、人間は共同体の中に埋め込まれていた。

 

ルネサンスなどを経て、個人の萌芽が生まれたのかもしれない。